なごみ
9/14【細胞神曲】
遅れたけど磯井実光誕生日おめでとう!!!!
いっぱい幸せになってね!
なごみ
――平穏な日々。
 今日はのんびり(仕事は見ない振りだ)しようとしたところドレフュスに見つかり、机の前まで引き摺られた、それくらいしか話す事がない程に“日常”を過ごさせてもらっている。
「ちょっと、親父、起きてください。早くしないと後悔しますよ」
 しばらく会っていなかった息子の声がする。
「ん〜〜?」
「ねぇ、早く」
「はるき……? なんでここに」
「寝ぼけてていいので起きる! リビングに行け!」
「は、はいぃ……」
 コイツ、容赦無いな……
 寝ぼけてふわふわした思考のまま言われる通りに起き、リビングへ向かう。  それを後ろから春樹が付いてくる。
なごみ
「今日来るって言ってたか?」
「アンタに言わなくても俺が行きたいと思ったら行きます」
「ですよね……」
 春樹の言葉が今日はなんだか少し柔らかく感じる。
 きっといつもなら「親父に許可取らないと来ちゃ駄目なんですか? へぇ……」と揚げ足をとるに決まっているのに!
 いつもは遅れてきた反抗期のように刺々しいのに!?
 ぼやけた思考回路でそれだけは理解した。
「え、今日なんかあったっけ?」
「いやアンタがそれを言うのかよ」
 リビングには麗慈が居た。
 ――食べ切れるかわからない程の料理の数々、ケーキと、ドーナツ……  それらを前に「やっと来た」という顔をしている。  本当になんなんだ。  麗慈も春樹も……特別な事でもあったのか?
なごみ
――いや。
 ある。あるわ。
 勘違いじゃなけりゃあるわ。

「「誕生日おめでとうございます、父さん」」
 お、俺の誕生日だ今日ーー!!
「忘れてたんですか、せっかく兄さんと準備したのに」
「まぁだいたい想像はついてたけどね」
「ふ、二人とも……」
 どうしよう、すげぇ嬉しい。
 言葉が出てこなかった。
 記者とかしてるし、ある程度話術は上手いと思っているが、今声を出したら情けない声が出るだけだろう。  そんな俺を見かねた麗慈が、春樹が、 「諦めないでくれて、立ち上がって掬い上げてくれてありがとう」  なんて言うから。トドメを刺してきやがって。
なごみ
「今日は父さんと呼びましょうか」
 ――待って。今は気持ちの整理つかないから親父で良いです。明日また呼んで。
 ……え? 今日限定なの?
「とりあえず料理冷めるんで食べません? 兄さんが父さんを起こしに行ってから俺はずっと焦らされてます」
 ――うん。だいぶ冷めてそうだよな、ごめん。絶対美味い料理なのに俺の涙と相まって塩気が効いた味がしそう。それにしても麗慈、よっぽど食べたいんだな、目が飯から離れてないぞ。

 二人とも、他人事だと思って呑気なもんだ。
 その言葉がどれだけ幸福な事か、大事な存在がここに居て、笑っていてくれるだけでどれだけ救われるか、俺しか知り得ない。
 今日は今日だけは。
 世界一幸福な日だ、と思わせてくれ。
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