
masaka
キャスリン・T.ガインズ/百木漠ほか訳「アーレントと黒人問題」を読んだ。アーレントがユダヤ人問題を追求した一方で黒人問題への対応が疑問視されることがある、程度のことは耳にしたことがあったが、ここではそれが根底的な考え方の問題として著作の随所にあらわれることを徹底的に追求する。政治的、社会的、私的というアーレントにとっての基本的区分においてユダヤは政治的で黒人差別は社会的とされ、アジアにすら認めた「人間」としての扱いをアフリカには拒み、植民地支配に反抗する暴力も否定する。結局その視点は支配者である白人のものであったというのは、近ごろのMAGAの主張とも重なるようで寒々しく、これまた読むのが辛い本だった